基盤Sコミュニケーション進化認知
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科研費基盤S 
コミュニケーション進化と認知機構

コミュニケーションとは何でしょう。進化生物学的には、「送信者が発する信号を受信者が受けることで受信者の行動が変容し、結果的に送信者が適応的な利益を得ること」と定義されます。この行動は、送信者と受信者がもつ内的機構により可能になります。これら内的機構を模倣、共感、報酬の3つのモジュールとしてその機構と機能をさぐりながら、こうした仕組みがどのように進化したのかに想いを馳せます。

お知らせ

勝さんの論文が出版されました
非ヒト動物の協力行動は多くが個別の貢献として解釈されます。本研究ではラットを使い、共同サイモン課題でパートナーの存在と課題の共有がパフォーマンスに与える影響を調べました。ラットは2つの音(3kHzと12kHz)の弁別訓練を行ったあと、サイモン課題を個別に行い、次に他のラットとペアになり半分に分割した課題を共同で実行しました。結果、分割課題を共同で行った場合(共同課題)にサイモン効果が確認されましたが、一方のラットだけが分割課題を行った場合は効果が観察されませんでした。これは、共同課題でみられたサイモン効果は単純な分割課題の加算では説明できないことを意味します。したがって、課題の共有はラットの個々のパフォーマンスに影響を与えることが示されました。
外研生・大学院生・共同研究者募集
本研究グループでは、共同研究者を募集しています。他機関の学部生・大学院生を外研生として受け入れることも可能です。日本学術振興会特別研究員等の受け入れ先としてもご相談下さい。
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代表挨拶

言語進化の研究に長年関わって参りました。その過程で、生物のコミュニケーションをボトムアップに理解することの必要性を強く感じました。なぜなら、コミュニケーション研究は最初からシステム的・トップダウン的であり、参画するエージェントの属性を問わぬことが多いからです。そのような方法で進めるコミュニケーション研究は、どうしても普遍性を欠いてしまい、ヒト・動物・人工物を含むコミュニケーション理解に至りません。本研究は、コミュニケーションに内在する認知機構からコミュニケーションをボトムアップに分析することで、新たな視点を開きます。ところで、抱えているのはリュートという楽器です。音楽は大切なコミュニケーションなので。

研究概要

 本研究の目的は、コミュニケーション行動を模倣・共感・報酬の相互作用として、動物からヒトに至るコミュニケーション行動を包括的に捉えることにあります。コミュニケーション行動は、他者との共感のもと、他者の行動を模倣する形で信号をやりとりし、結果として内的・外的な報酬を得ることから成り立ちます。コミュニケーション行動をこれらの認知システム間の相互作用として捉えることで、その本質的な理解が進むでしょう。
 本研究は鳥類、齧歯類、ヒトを含む霊長類まで、多様な動物種の多彩なコミュニケーション行動を対象として、神経回路から行動までを統合的に理解しようとするものです。具体的には、鳥類の発声学習(模倣系と報酬系)、齧歯類の情動伝染(共感系と報酬系)、鳴き交わしなどの交替行動(三系の連携)、自由行動下での社会的相互作用等を対象とします(三系の連携)。仮説として、1:コミュニケーション行動の基盤として模倣と共感がある、2: 模倣と共感は、脳の報酬系が制御している、3: これらの相互作用は、他者の行動予測に不可欠である、を検討します。

組織

本研究組織は、岡ノ谷を代表として、多様な分野への強みをもった若手・中堅研究者を分担とし、トリ、ラット、サル、ヒトを対象としてコミュニケーション行動を探ってゆきます。

共同研究者のみなさま

2024年2月20日、研究グループ発足ほぼ1年を記念して、関係者ほぼ全員であつまり、進捗・計画検討会を行いました。その後、お寿司を食べながら親睦を深めました。コミュニケーションには対面場面の交流が不可欠なのです。コミュニケーション研究も同じです。写真へたですね。私がとりました。

動物たち

ジュウシマツ
なんせ聴覚発声ミラーニューロンが生理学的にも遺伝子発現でも同定された鳥はジュウシマツだけですから。
キンカチョウ
トリのさえずり研究のほとんどはこの鳥です。特に学習と報酬系との関係は、キンカチョウでものすごくわかってきています。
ラット
哀しいとき22kHzで、うれしいとき50kHzで鳴くのです。哀しいときはうずくまり、うれしいときは近づいてゆくのです。なぜだ。どうなっているんだ。
ニホンザル
ニホンザルはウッキーではなく、クーと鳴き、互いに返答をします。血縁びいきが強く、優劣順位が厳しいことがニホンザル社会の特徴です。
マーモセット
現代のヒト社会と同じような一夫一妻の南米の小さな霊長類。音声コミュニケーションがとても活発。共同養育なども興味深く、この研究にぴったりな動物です。
人間
自己家畜化の進んだ霊長類です。言葉を獲得しちゃったので概念だけで集団形成し身内びいきします。滅亡に気をつけて文化を蓄積しましようね。
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研究成果

論文

実際のスクロールの挙動は、プレビュー/公開ページでご確認ください
  • Katsu, N., & Okanoya, K. (2024). Examination of the joint Simon effect in rats: Changes in task performance based on actions of the partner. Behavioural Processes, 216, 105005. https://doi.org/10.1016/j.beproc.2024.105005
  • Subias, L., Katsu, N., & Yamada, K. (2024). Metacognition in wild Japanese macaques: cost and stakes influencing information-seeking behavior. Animal Cognition, 27(22), 1-17. https://doi.org/10.1007/s10071-024-01851-z
  • Wada, R., Kamijo, M., Katsu, N., Hakataya, S., Okanoya, K., & Koda, H. (2024). Familiarity modulates preference for joint feeding with conspecifics in rats. BioRxiv, 2024.04.18.590018. https://doi.org/10.1101/2024.04.18.590018
  • Hakataya, S., Katsu, N., Okanoya, K., & Toya, G. (2023). An exploratory study of behavioral traits and the establishment of social relationships in female laboratory rats. PLoS One, 18(12), e0295280. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0295280
  • Kondoh, S., Fujimura, T., Nakatani, H., Muto, S., Nonaka, Y., & Okanoya, K. (2023). Experiencing respect elongates the orienting response: a pilot study. Discover Psychology, 3(1), 17. https://doi.org/10.1007/s44202-023-00075-5
  • Yuki, S., Sakurai, Y., & Yanagihara, D. (2023). Rats adaptively seek information to accommodate a lack of information. Scientific Reports, 13(1). https://doi.org/10.1038/s41598-023-41717-x

総説・解説

実際のスクロールの挙動は、プレビュー/公開ページでご確認ください
  • 岡ノ谷一夫. (2023). 音声コミュニケーションと脳の進化. Clinical Neuroscience, 41(12), 1594-1598.
  • 橘亮輔. (2023). 小鳥の子育てと音声の関連. 動物心理学研究 73(2), 99-105. https://doi.org/10.2502/janip.73.2.8

講演・学会発表

実際のスクロールの挙動は、プレビュー/公開ページでご確認ください
2023

 国際学会
  • Chen, W., & Okanoya, K. (2023). Integration of Auditory and Visual Cues for Individual Recognition in Bengalese Finches: Analyses of Vocalizations and Behavioral Interactions [poster]. XXVIII International Bioacoustics Congress (IBAC2023), Sapporo, Japan.
  • Furutani, A., & Okanoya, K. (2023). Java Sparrows distinguish emotional vocalization using sound structure [oral]. XXVIII International Bioacoustics Congress (IBAC2023), Sapporo, Japan.
  • Hakataya, S., Furutani, A., Mori, C., Tobari, Y., Yang, E.-Y., Tsai, C.-R., . . . Okanoya, K. (2023). Investigation of sex and individual differences in distance calls of Scaly-breasted Munias (Lonchura punctulata topela) in Taiwan [poster]. XXVIII International Bioacoustics Congress (IBAC2023), Sapporo, Japan.
  • Hu, Z., Toji, N., Wada, K., Tobari, Y., Mori, C., Hakataya, S., . . . Yao, C.-T. (2023). Transcriptomic alteration associated with song changes through domestication in songbirds [poster]. XXVIII International Bioacoustics Congress (IBAC2023), Sapporo, Japan.
  • Inoue, Y., Sinun, W., & Okanoya, K. (2023). The note orders in songs of male Northern Gray gibbons may have meaning [poster]. XXVIII International Bioacoustics Congress (IBAC2023), Sapporo, Japan.
  • Katsu, N. (2023). Examination of convergence of call timing during vocal turn-taking in Japanese macaques [poster]. XXVIII International Bioacoustics Congress (IBAC2023), Sapporo, Japan.
  • Koda, H. (2023). Vocal and social behaviors in primates. “Primate Vocal Communication and Cognition” [invited lecture]. International Training Course on Behavioral and Cognitive Biology, under the Strategic Partnerships Program of Kyoto University-University of Vienna., The Center for the Evolutionary Origins of Human Behavior (eHub), Kyoto Univ. Inuyama, Aichi. https://www.ehub-kyoto-u.com/en/researches/kuvie
  • Kondoh, S., Okanoya, K., & Tachibana, R. (2023). Examining the interaction between top-down and bottom-up processes of eter perception: an EEG study with biphasic sound stimuli [oral]. ICMPC17-APSCOM7, Tokyo, Japan.
  • Koshiishi, R., Saito, Y., Yanagihara, S., Yanagihara, D., & Okanoya, K. (2023). Neural processing of emotional vocalizations in rats: involvement of the dopaminergic system [oral]. XXVIII International Bioacoustics Congress (IBAC2023), Sapporo, Japan.
  • Minamii, M., Hakataya, S., & Okanoya, K. (2023). An Exploratory Study on Rat Ultrasonic Vocalizations Elicited by Observing Food Reward Delivery to Another Rat [poster]. XXVIII International Bioacoustics Congress (IBAC2023), Sapporo, Japan.
  • Okanoya, K. (2023). Domestication as a path to signal complexity in Birdsong [Invited Lecture]. Israel Institute of Advanced Studies, Hebrew University, Israel.
  • Suzuki, Y., Yanagihara, S., Koike, S., & Okanoya, K. (2023). Audio-Vocal Mirror Neurons in the Basal Ganglia of Bengalese Finches Change Their Response Properties during Development [poster]. XXVIII International Bioacoustics Congress (IBAC2023), Sapporo, Japan.
  • Toya, G., Mizumoto, T., Okanoya, K., & Tachibana, R.-O. (2023). Social interactions in Bengalese finches (Lonchura striata var. domestica): Automated Measurements using Visual and Auditory Signals to Test for the Commitment Hypothesis [poster]. XXVIII International Bioacoustics Congress (IBAC2023), Sapporo, Japan.
  • Utagawa, E., & Okanoya, K. (2023). Emotion regulation by music listening in relation to individual characteristics: evaluation by brain correlates and subjective indices [poster]. ICMPC17-APSCOM7, Tokyo, Japan.
  • Yanagihara, S., Ikebuchi, M., Mori, C., Tachibana, R.-O., & Okanoya, K. (2023). Role of dopamine in the social enhancement of vocal learning in zebra finches [poster]. XXVIII International Bioacoustics Congress (IBAC2023), Sapporo, Japan.

 国内学会
  • 岡ノ谷一夫. (2023). 情動発声がカテゴリ化する条件 [基調講演]. 超音波発声研究会2024, 鹿児島大学.
  • 勝野吏子. (2023). Effect of social relationships on call convergence during vocal turn-taking in Japanese macaques [poster]. 日本動物心理学会第83回大会, 帝京科学大学千住キャンパス.
  • 勝野吏子. (2023). ニホンザルの近距離音声鳴き交わしにおける発声間隔の収束 [ポスター]. 第39回日本霊長類学会大会, 兵庫県民会館、神戸市.
  • Kusayama, T., Toya, G., Hakataya, S., & Okanoya, K. (2023). Measuring social distance in rats: Does spatial structure visualize psychological distance? [poster]. 日本動物心理学会第83回大会, 東京.
  • 輿石りせる, 齋藤優実, 柳原真, 柳原大, & 岡ノ谷一夫. (2023). ラットUSV聴取による行動変化の神経機構:ドーパミン系の関与 [口頭]. 超音波発声研究会2024, 鹿児島大学.
  • 輿石りせる, 齋藤優実, 柳原真, 柳原大, & 岡ノ谷一夫. (2023). ラット情動音声知覚による行動変化は報酬系で調節されるか [ポスター]. 日本動物行動学会第42回大会, 京都.
  • Goto, K., & Yuki, S. (2023). Visualization of mediating behaviors of mice during a delayed matching-to-position task [poster]. 日本動物心理学会第83回大会, 帝京科学大学千住キャンパス.
  • 近藤聡太郎, 橘亮輔, & 岡ノ谷一夫. (2023). 拍子認知と予測誤差:心理物理学的計測による検討 [口頭]. 日本音響学会聴覚研究会, リオン株式会社、東京.
  • Subias, L., Katsu, N., & Yamada, K. (2023). Experimental study of metacognition in free-ranging group of Japanese macaques [oral]. 第39回日本霊長類学会大会, 兵庫県民会館、神戸市.
  • Subias, L., Katsu, N., & Yamada, K. (2023). Factors influencing information-seeking in Japanese macaques [oral]. 日本動物心理学会第83回大会, 帝京科学大学千住キャンパス.
  • 橘亮輔, 近藤聡太郎, 仁田純, & 岡ノ谷一夫. (2024). 雑音の反復知覚における時間周波数変調手がかり [口頭]. 日本音響学会聴覚研究会, 筑波大学.
  • Toya, G., Goto, K., Okanoya, K., & Yuki, S. (2023). The advantage of internal state-based behavioral optimization on reinforcement learning [poster]. 日本動物心理学会第83回大会, 帝京科学大学千住キャンパス.
  • Nagamura, H., Ohnishi, H., Kobayasi, K. I., & Yuki, S. (2023). Adaptive behavioral strategy, not performance, depends on how metacognitive information is used [poster]. 第46回日本神経科学大会, 仙台国際センター.
  • 長村秀一, 大西啓詩, 小林耕太, & 結城笙子. (2023). 予見的メタ認知は評価方法によって変化する [ポスター]. 日本基礎心理学会 第42回大会, 豊橋技術科学大学、愛知県豊橋市.
  • 新里琉美, 武山実椰, 濱崎菫, 博多屋汐美, 森千紘, 古谷明梨, . . . 戸張靖子. (2023). 野生コシジロキンパラの歌の複雑さは体サイズを反映する [口頭]. 第47回鳥類内分泌研究会, 名古屋.
  • 博多屋汐美, 外谷弦太, & 岡ノ谷一夫. (2023). ラットの社会行動追跡:社会関係構築と個体特性の関連 [口頭]. 超音波発声研究会2024, 鹿児島大学.
  • 博多屋汐美, 勝野吏子, 外谷弦太, & 岡ノ谷一夫. (2023). ラットの行動特性が社会関係構築に与える影響の探索 [ポスター]. 日本動物行動学会第42回大会, 京都.
  • 古谷明梨, 柳原真, 藤井朋子, 橘亮輔, & 岡ノ谷一夫. (2023). 鳴禽類の情動音声に対する高次聴覚野の応答 [口頭]. 第47回鳥類内分泌研究会, 名古屋.
  • 南井まり佳, 博多屋汐美, & 岡ノ谷一夫. (2023). 同種他個体へのエサ報酬伝達の観察で発されるラットUSVの探索的研究 [口頭]. 超音波発声研究会2024, 鹿児島大学.
  • 柳原真, 池渕万季, 森千紘, 橘亮輔, & 岡ノ谷一夫. (2023). 社会的相互作用にもとづく小鳥の発声学習を支える神経メカニズム [招待講演]. 日本動物学会第95回大会「動物学会シンポジウム:動物の社会性行動とその発達のしくみを探る」, 山形.
  • Yuki, S., Sakurai, Y., & Yanagihara, D. (2023). Medial prefrontal cortex neurons represent different events and information seeking behaviors during task [poster]. 日本動物心理学会第83回大会, 帝京科学大学千住キャンパス.
  • 和田玲央, 上條槙子, 勝野吏子, 博多屋汐美, 岡ノ谷一夫, & 香田啓貴. (2023). ラットの単独 / 共同採食選好に他個体の数と同居関係が及ぼす影響 [ポスター]. 日本動物行動学会第42回大会, 京都大学.
  • 和田玲央, 輿石りせる, 博多屋汐美, 外谷弦太, 香田啓貴, & 岡ノ谷一夫. (2023). ラットUSVマッピングの試み:音響特徴と発声文脈に着目して [口頭]. 超音波発声研究会2024, 鹿児島大学.

図書

実際のスクロールの挙動は、プレビュー/公開ページでご確認ください
岡ノ谷一夫. (2023). 私の心と動物の心. In 帝京大学先端総合研究機構 (Ed.), 未来を拓く「自分流」研究 (pp. 130-147). 東京: 帝京大学出版会.

その他

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